浴衣戦略

夜、スーパーに鰻を買い出しに行く途中、浴衣のおねえさんや小さな女の子を見かけた。なんとなくマイクの声らしきものも聞こえていたし、もしかしたら近所で夏祭りをやっていたのかもしれないなあ。

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浴衣を見てふと、去年奈良・京都に行ったときのことを思い出した。

ちょうど1年前くらいに天理図書館へ古文書を見に行った。天理図書館は、奈良県天理市天理教本部や天理大学の一角にある図書館で、二代目の教祖が戦後の混乱期に売りに出された古典籍を精力的に収集した一大コレクションが蔵書の中心である。国宝や重要文化財、重要美術品やらがわんさかとある、日本でも有数の図書館である。この辺りの事情は、ちょうどその頃活躍していた古典籍商で、その教祖と長く親交のあった反町茂雄氏の『一古書肆の思い出』(平凡社ライブラリー)に詳しく載っている。(おっと、大学院生っぽいなあ。)


で、天理には二日ほどいたのだが、帰りのことはまだ決めていなかった。ふと最後の日の朝喫茶店で見た新聞で、祇園祭宵山の当日だ、ということに気づき、帰りに祇園祭に行ってみることにした。

近鉄奈良駅から京都行きの急行に乗ると、浴衣のおねえさんやおにいさんがいっぱい。やっぱり祇園祭というのは集客力がすごいんだなあ、と改めて認識した。僕の脇にも、青のかわいい浴衣をきたおねえさんが立っていた。

「ああ、きれいだなあ」

とか思いつつ、ふと彼女のたもとを見ると、何と値札がぶらり。

「今年の新作なんとかかんとか・・・」と

書いてある。

最初は、

「言ってあげた方がいいかなあ」

とすなおに思ったのだけれど、僕の頭で妄想が働きだした。

 

もしかすると彼氏に

「何やお前、値札ついたまんまやんか。けど、今日のために浴衣買ったんやなあ。そういうお前が好きやねん。」

と(わざと)言わせて、

「あ、はずかしい。ごめぇーん。でもあなたに最初に見てもらおうと思って、おろしたての浴衣着てきたのよ。」

と、「ちょっと抜けているけれど、けなげな女」を演出するためにわざと付けっぱなしにしてるのかも知れない。

 

とすると、僕が彼女に教えてあげることが逆に、

「何やこの男、余計なこと言いくさって作戦ぶちこわしにしよって、ボケ!もっと気ぃ利かせんかい。」

と思われることになる。う゛ーむ、どうしたものか。


って、結局教えてあげたんですけどね。

彼女は顔を赤らめながら、

「あ、ありがとうございます・・・」

と言って、値札を必死に引きちぎっていた。

「ああ、いいことしたなあ、僕って善人。」

と僕は自己満足にふけったのだった。

 

でも、今日さんまの番組に出ていたオセロを見ていると、ここまで小細工を仕込む女の子が居てもおかしくはないなあ、とちょっと思った。以前友人(女)にこの話をすると、

「ゼッタイそういうオンナはいるはずだ!」

と断言された。うーん、どうなんでしょ。