『Love Letter』のサントラ

なんとなく沈んでいる時には、静かな音楽が聴きたくなる。今流しているのは、岩井俊二の『Love Letter』のサントラ。自分的に、退行しているような気もするんだけれども、時にはこういう綺麗なメロディーの曲もいい。

この映画のオープニングは、雪の中だ。この雪は、後に出てくる小樽の雪や「お山」の雪の伏線にもなっている。この直後に出てくる墓前での一周忌のシーンは、まあ反則技という感じも多分にするのだが、否応なしに「藤井樹」の物語に引き込んでしまう力をもっている。この時に流れているのが、サントラでも一番最初に収められている「HIS SMILE」という曲。

それから、中山美穂扮する「藤井樹」が風邪の診察のために訪れた病院で、数年前に肺炎で病院にかつぎ込まれた父親のことを、タイム・マシンに乗せられたかのように回想するシーン。ここで流れている「FROZEN SUMMER」という曲。

物語が終わりに近づいた、中学生の頃のフラッシュ・バックの最後のシーン。転校することになった同級生の柏原崇に自宅で手渡された本を、酒井美紀が図書室の書架に戻す場面。この映画全編を通して酒井美紀は秀逸だと僕は思っているのだけれど、特に最後のシーンは好きだ。そして酒井美紀が本を戻して図書室をあとにする場面、ここで流れている「A WINTER STORY」という曲。

この3曲と中山美穂が「お元気ですかー」と「お山」に向かって叫ぶシーンに流れていた曲と、エンディングの曲。これが『Love Letter』のなかで僕のお気に入りの曲である。

この映画も劇場で見たわけではなかった。一昨年頃突然CXのドラマの『白線流し』が見たくなってビデオ屋に日参して見続けたのだけれど、その勢いと酒井美紀繋がりで借りてみたものだ。でも結果的には、作品としては『白線流し』よりも『Love Letter』の方がよかった。「白線流し」の方は、なんだか失われた「清純さ」や「純潔」を地方の高校生に投影して自己のアイデンティティを補完しようとしているような気がする。ノスタルジーを喚起しようとしているところがちょっといやだった。

『Love Letter』の、影の主人公の「死」を物語の底流としつつ、手紙のやりとりを通じて過去の記憶の隠れた一面に光を当てていくという物語の構成は面白かった。こっちのほうがよかったと感じたのも、いろいろな奥行きが物語の中に見出せたからかも知れない。