院生の暮らしと収支

大学院生が院生として暮らしていく上での収入や支出は、いったいどのくらいなのだろうか?

僕の実家は東京ではないので、まず生活するための基盤が必要だ。家賃・光熱費・食費等の経費がそうである。東京で一人暮らしをするとなると、ワンルームや1Kで家賃がだいたい6~7万くらいだ。その他食費などの経費を含めると、最低10万以上は必要なのではないだろうか。

学生としての身分を維持するためには学費が必要だ。僕の在籍している大学院は他の所に比べるとずいぶん安いようだが、それでも40万くらいはかかる。これを年間12ヶ月で割ると3万円から3万5千円くらい。

研究のためには本がどうしても必要だ。もちろん図書館で借り出してはいるが、どうしても手元に置いておく必要のある本や、充実した図書館を利用できない環境になったときのために自分の研究分野の蔵書を構築していく必要もあり、すべてを図書館に依存するわけにはいかない。

最近では研究書1冊でも1万くらいする。歴史の分野だと史料集はもっと必要だ。おととい注文した昔の公家の日記は、全7巻で1冊当たりやっぱり1万円近くする。お金がないのでひと月に1冊づつ送ってもらうようにしたが、それだけでも月1万。もちろんそれだけでは済まない。やっぱり図書購入費として、平均すると月に数万は必要だろう。

文献のコピー、文具などにもお金がかかる。パソコンも、いってみれば文具とみなすことができる。パソコンまでも含めると、結局平均月1万くらいはかかるだろう。

研究会や勉強会に出るとお金がかかる。といっても、出席するのに直接お金がかかるわけではない。だいたいはそういった会のあとに飲み会が設定されていて、報告や討論では聞けなかった「本音トーク」が聞けたりする。そしてそれが実は結構勉強になるのだ。まあ飲みの口実を作っているだけだという考え方も成り立つが(笑)。飲み代でも月1万以上は消えてるだろう。

こうやって列挙してみると、これだけでもう月20万近くのお金が必要なことになる。しかもこの中に、服や映画や、そういったものに使うお金は含まれていない。

けれども日本育英会の博士課程奨学金は自宅外で11万5千円。これでは東京での生活を維持することさえおぼつかない。したがって当然アルバイトをしなければ上に上げたような活動を維持できない。

仮に時給千円のアルバイトをするとなると、必要経費20万の内の残り9万5千円を稼ぐためには、95時間の労働が必要だ。ひと月約4週間として、95時間を4で割ると週約24時間。9時から18時まで、昼休み1時間を除いてフルタイムで働いて3日。9時から16時までの6時間労働だと4日だ。

実際にはもっと割のいいバイトも取り混ぜてはいるけれども、だいたいはこんなもんだろう。

週に4日も9時-16時で働いてたりすると、いったい院生が本業なのかバイトが本業なのかわからなくなってくる。生活の中で研究の比重が明らかに低下してくる。もちろん院生にとって研究が本分なのは百も承知だが、収入が途絶えれば研究はおろか荷物をまとめて実家に引っ込んでしまうよりほかない。

だから、仕事を減らして研究しようとすると、それなりの覚悟がいる。

是はまあ僕の場合と考えてもらって差し支えないが、他の院生の方々は、どのようにして生計を立てているのだろうか。