別れ話

そう、一昨日は「金がない」という驚愕の事実の前に、ネタをすっかり忘れてしまっていた。

一昨日の夜、借りてきた史料集の数ページをコピーしようと思って駅前のコンビニに行った。雨が降り始めてきていた。僕はコピーを始めたのだが、10枚ほどコピーしたところで「トナー切れ」の表示が出てしまい、店の人に直してもらうことになった。

僕は手持ち無沙汰になって、取りあえず店員の後ろにいた。すると雑誌コーナーの方から、今まで聞き取れなかった携帯の声が聞こえてきた。

「私もう22だから、就職活動も・・・」ああ、今の時期は大変なんだろうなあ。

「遊んでいればいいあなたとは違うのよ」ちょっと疲れて八つ当たりしてるのかなあ。

「別に19のあなたなんかに言われたくないわよ」え?

「あなたなんてもう男として見切ってるから」え、え・・・?

思わず後ろを振り向くと、22よりちょっと若い感じの、「女の子」といった方がいいくらいの人が、雑誌をめくりながら喋っていた。楽器の入っているらしい黒いケースを傍らに置いて。

なんなんだと聞き耳を立ててみると、どうも彼女は年下の男との別れ話を携帯でしているようなのだ。それも、自分から別れを切りだしているふう。上の言葉からもわかるように、彼女はかなり確信と自信に満ちた言葉で、相手をバッサバッサと切り捨てている。

で、きつい言葉で話しているのだが、手と目は雑誌に向かっているのだ。相手の19の男は、まさか立ち読みのついでに別れ話を切り出されているとは夢にも思わないだろう。僕だって、まさかコンビニの雑誌コーナーで他人の別れ話が聞けるとは思ってみなかったんだから。