小さな小さなクラッキング

この2日ほど、夜になると頭痛がして日記を書く気になれなかった。疲れか何かなのだろうか、それにしてはよく寝ているはずなのに。日中は大丈夫なのだが、夜になるとだるくなるのだ。今日も夜7時頃はだるかったのだが、晩飯食ってコーヒー飲んだら治った。

借りていた本のうち、2冊の返却期限が今日までだったので、夕方図書館に行った。世間的には今日は3連休の中日なのだろうけれど、そして実は僕も今日は有休を取って休みなのだけれども、大学の図書館はちゃんと9時までやっている。うん、すばらしいことだ。

僕の大学の図書館は、キャッシュカードやクレジットカードのようになっている学生証をスキャンするだけで入れる一般図書のフロアと、荷物を預けて学生証を提示して入らなくてはならない研究書庫とに分かれている。

一般図書のコーナーにも結構な量の本はあるのだが、専門の研究書になるとやっぱりそのほとんどが研究図書の方に配架されている。うちの大学の図書館は、洋書なんかはあまり強くないらしいが、僕の研究分野に関してはかなりの本が揃っている。日本国内で刊行されている主な自治体史や、最近の研究書のたぐいはほぼすべて揃っていると言ってもいいくらい。もちろん、なかには目的の本が所蔵されていないこともあるが、その時は国会図書館に行くので、刊本を見るために他の大学の図書館に紹介状を書いてもらったことは今まで一度もない。

けれども英米文学をやっている僕の友達は、よく紹介状を書いてもらっていたので、たまたま僕の分野に関して蔵書が豊富だと言うだけなのかもしれない。

ちなみに僕の大学の図書館はNACSISには参加していない。データベースそのものは公開されているのだが。何か問題でもあるのだろうか。


ずいぶん話が別の方向に進んでしまった。

本を返却したあと研究書庫に入って、必要な本をパソコンで探していたのだが、となりで検索してた奴、どうも挙動が不審なのだ。必要以上にキーボードをカタカタ叩いてみたり、「Enter」キーを叩いたあと30cmも手を跳ね上げてみたり。せいぜい学部生くらいの年みたいなのだが、いわゆる「オタク」系ファッションに身を包んでいる。あまり関わり合いたくない感じの男だ。なーんだこいつ、とは思ったのだが、実害を被ったわけでもないので、それ以上は特に気にもせずその場を離れた。

で、検索した本の請求記号をよく覚えていなかったのでもういちどパソコンのあるところに行ったら、そいつが使ってた機械のディスプレイに、あろうことかエロサイトの画像が表示されていたのだ!

僕はエロサイトが大っ嫌い、なわけではない。けれども、図書館のシステムでは一応学内の図書館システムだけしか閲覧できない設定になっている。その設定をクリアするのはたぶん簡単なことなんだろうけれども、だからといって別に図書館の中でそういうサイトに接続しようとは思わない。むやみにそういうクラッキングって言うのかな、そういうことをやると、図書館検索システムの利便性が著しく悪くなるガードをかけざるをえなくなるからだ。

しかもその気色悪い奴は、僕がその場を立ち去ってからわずかの間にそのサイトを表示させ、自身も立ち去っている。つまり、そのサイトを見るためではなく、エロサイトを図書館内で表示させるだけのために学内専用の設定を無効化したのだ。つまりは愉快犯って奴だ。

だいだい女性もたくさんいる図書館の中でそういうサイトを表示させるっていう神経が、セクハラそのものだ。

そこで僕は当然のことながらその表示を閉じたのだが、どうもそいつ、また戻ってくるのではないか、という気がしたので、柱の陰に隠れて様子を窺ってみた。

するとものの1分も経たないうちに、いかにもオタクっぽい格好をした、さっき隣でパソコンいじってた奴が戻ってきて、「なんだよっ、ちっ」みたいなことをブツブツ呟きながらまたエクスプローラーの画面開いてなんかやってる。

むかっ腹が立ったので、ツカツカとそいつの後ろに歩み寄って、
「お前何してるんだ」
と詰問した。

するとそのオタク野郎、こっちを振り向きもせず
「戻してるんですよ」
とか抜かしやがった。

「お前がその画面を表示させたのはわかってるんだ。迷惑なんだよ。」
と更に詰問すると、

「いや、こわくなったから、元に戻そうと思って・・・」

こいつ、馬鹿か、とあきれ果てた。

これ以上奴に付き合うのも時間の無駄だし、これくらいビビらしとけば十分だろうと思って、その場を離れた。

それにしても、彼は何が楽しくてそんなことをやってるんだろうか。愉快犯、と言ってもたかが図書館程度の設定を破るくらいどうってことないだろう。

国防総省や日本の官庁のサイトに侵入する奴らに比べれば、こいつなんてゲス野郎ですらない。そもそも休みに挟まれた土曜日の夕方、あまり人のいない図書館の研究書庫でそんな小さいクラッキングやって、本人は「お堅い図書館でそんな画像出したら、ここにいるお堅い連中はみんなひっくり返るに違いない、ウシシ」とか思ってるのかもしれないけれど、僕から見るとどうしようもなくスケールの小さい小心者の自己満足に哀れみすら覚えてしまった。