「[Focus]」井坂聡 1996

浅野忠信白井晃が出演している作品。これ、かなり面白かった。まずカメラが、テレビの撮影のためのカメラという視点で最初から最後まで一貫している。白井晃扮するドキュメンタリー番組のディレクター(?)が、取材を受ける一般人役の浅野忠信に対して強引な取材を重ねた挙げ句、浅野忠信がついにキレてしまって・・・というあらすじで、もちろんマスコミ批判と解釈すればそう理解できる映画ではある。だが僕はむしろ、映像というものがいかに「作られる」ものであるのかを、「段取り」を決める者の反転を通じて描き出しているように感じられた。

浅野忠信がディレクターとアシスタントに銃で脅して「ハメ撮り」、まあつまりレイプを強要する場面があったのだが、反転という構図の中で考えると、取材者が被取材者に対して行っていることを象徴させているような気がする。

って、同じようなこと感じてる人やっぱりいるんだ。浅野忠信がとても演技とは思えないほど自然さを出していたというのにも、納得。ただ、カメラマンの立場についてのコメントはどうかなあ。この映画では、視点の位置としてのカメラマンにはこだわっていたように思うが、カメラマンが映像をとり続けることそのものについてはそこまで深く掘り下げていなかったような気がする。

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どうしてもあとで見た方のイメージが大きくなるので、黒沢監督の方がやや感想の中身が薄くなっているなあ。

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1本目を見終わったところで、指導教授から電話。この間自治体史の会議でご一緒した考古学の先生がお亡くなりになったとのこと。驚き。つい10日ほど前の会議ではお元気な様子だったのだが。