ゼミ報告会。

これまでD論の構想報告は、夏と春のどちらかにやるっていうことだったんだけれど、博士課程の人間が多くなってきたので、今年から冬にもやるようになった。今年の報告者は3人。

最初の報告は、懸案事項の関係で少し到着が遅れたせいで途中から聞くことになった。あるメジャーな素材に関するこれまたメジャーな論文への批判を試みた報告。今回のは、いつもの彼の報告の強みだった大量のデータ処理がなくって、史料の読み返しから批判を試みようというものだった。最近研究が盛んなあるテーマをふまえて分析していこうという方向性そのものは、賛否両論はあるにせよ、悪くはないんだろうと思った。けれど、うーん、メジャーな議論の批判を展開するとして、問題はむしろその批判の先に見えてくるものは何かってことなのに、少なくともこの報告からは、それは見えてこなかった。質疑の場で先輩が指摘してた、まずは作業を積んでデータを出すってところから始めた方が建設的な仕事になるんじゃないのって指摘が、当たってるような気がしたなあ。

次の報告は、けっこう僕の問題関心ともかぶってくる素材を使い、ある事件をきっかけに起こった変化を経済の問題として読み解こうとした報告。僕の関心とかぶるところもあるものだから、けっこうおもしろく聞いたけれど、報告としては、やっぱり経済の報告ではなかったと思うなあ……あと、事件の前後の経緯や変化を羅列的に追うだけじゃなくって、まずは事件の綿密な分析と、構造的変化をきちんと把握していくことが重要なんじゃないかなあと感じた。でも、この問題はけっこういろいろ展開できそうな気がする。ついでながら、質疑の最後にあったコメントだけど、正直僕はその史料をそんな読み方はできないだろって思った。

最後は、これまであまり注目されてこなかったある組織のある職掌の人について、具体的に検出していき実態を明らかにしようとした報告。報告としては、この報告が一番まとまっていたんじゃないかなあ。明確に、その実態を提示できてたわけだし。たぶん史料的にはきついんだろうけれど、こういう連中が、その組織外部でどんな活動を行っていたのかとか、それと同類の他の組織の連中との比較とかをやっていけば、だいぶ奥行きの深い議論になるような気がした。個人的な感想としては、えらい人はあんまり下向しないんだな、というところが、僕にとってはおもしろかった。