旅行記その2

ハウステンボスの地は、僕がこの街に住んでた頃には「針尾工業団地」という、「工業団地」とは名ばかりのただのだだっ広い草むらだった。もっと昔には軍の兵舎があったらしい。それがああいう形のリゾートになって、あの辺りの光景は様変わりした。まあ今回はそういう視点からじゃなくって、単なる一観光客として訪れてみようと思った。

金曜の夜に長崎入りして最初に泊まったのは、ホテル日航ハウステンボスだった。これは東京からのパックに付いてた分。比較的安く泊まれたのでそれほど期待はしてなかったんだけれど、従業員の人たちの対応も悪くなかったし、大浴場があるのがよかった。やっぱり疲れを取るにはおっきなお風呂に入るのが一番!あと、こぢんまりしてて落ち着いた雰囲気なのもよかった。まあ館内に子どもが多かったのはご愛敬かな。朝食はバイキング。さすがにそこまで大きなホテルじゃないのでその場でオムレツ焼いてくれるとかそういうのはなかったけれど、スペイン風オムレツは美味しかった。

翌日の夕方、ハウステンボスに入園。ホテル宿泊者は入園ゲート前のところでチェックイン。荷物もそこからホテルの部屋まで別途運んでくれた。

園内では、船着場からホテル宿泊者専用のカナルクルーザーに乗る。のんびりとハウステンボスの運河を巡って、オランダ風の街並みをまったりと見物。ドムトールンというタワーに見下ろされながら、中庭風にしつらえてあるホテルヨーロッパ専用の船着場に到着。チェックインを済ませ、部屋に入る。

デラックスルームと普通の部屋とで1000円しか違わないということだったので、デラックスルームにした。ホテルの玄関を見下ろせて、港を望めるいい場所にある部屋だった。調度は落ち着いた感じ。室内も広くて、ついつい荷物を思いっきり広げてしまいそうな衝動に駆られた(笑)

ちょうど夕暮れ時だったので、相方さんを誘ってさっき横をかすめた塔に登ることにした。ハウステンボスの街並みの向こうには、針尾無線塔としての機能を果たしていた飾りっ気のない塔が三本、夕陽に照らされていた。あの塔は、「ニイタカヤマノボレ1208」の暗号文を発信したとされることで有名な無線塔で、数年前まで現役で使用されていたらしい。

あの塔は、この地に軍事施設のあった頃から、敗戦、そしてこの地に上陸した大陸からの大勢の引揚者といった歴史を眺めてきている。あの塔とこちらの塔とのあいだには、米軍の家族のためのマンションも建てられている。つい最近建ったのに昔からあるような顔をしているこちらの塔を、あの塔はどんな思いで見ているのだろうか。そんなことを、こちらの塔からあちらを眺めながら考えていた。(つづく)