紙媒体その後

紙媒体の話、とりりんさん(6/20分)だけでなく、くろひょうさん(6/18分)からもコメントをいただいた。ありがとうございます。

とりりんさん自身は紙媒体を否定していないのに対して、くろひょうさんは(否定というわけではなく)取って代わられるべきだ、と主張している。結構いろんな意見があるんだなあ、と僕としても面白かった。

僕の意見をもう少し補足しておくと、現在紙媒体で発行されているもののうち、紙媒体がしばらくは残っていく分野と、Web上での公開に取って代わられる分野との、二つに分化していくのではないか、という見通しを僕は持っている。

このうち、Web上での公開に取って代わられる分野というのは、やや専門性のある情報のやりとりではないかと思っている。専門性というのは、必ずしも学術的なものに限らず、いわゆるマニア向けの情報なども含まれる。

こういった情報を紙媒体として発行しようとすると、どうしてもコストがかさむし、広く情報を発信しようと思ってもなかなか流通しにくい。その点Web上での公開ならば、簡単に情報を発信することができるし、アクセスも容易だ。別に紙にこだわる必要はないと思う。この点ではくろひょうさんの意見に全く賛成だ。

学術雑誌については、理系方面については知らないけれど、歴史や文学の分野で紙媒体をやめてWeb上だけで公開とした雑誌はまだ聞いたことがない。たぶんないと思う。まだそんなにインターネットが普及しているとは思えないからだ。けれども、これからもっとインターネットが普及すれば、特に小規模の学会などではネット上での公開が広まってくるのではないかと思う。今はまだいろいろと問題があると思うが、くろひょうさんのおっしゃるように会員に限定するとか課金とかの問題が技術的に簡単にクリアできるようになれば、きっと爆発的に増えてくるだろう。


で、紙が残っていく分野というのは、逆に総合性を売り物にしている分野、つまり全国紙の新聞のようなものじゃないか、と思っている。この間は「制約」と書いたけれども、それは表現だけの問題ではなく、分量の問題でもある。で、僕の考える分量の制約とは、紙幅という発信側の問題ではなく、むしろ読み手である人間の側の問題だ。

「1日のニュース」という形で人間の処理できる分量というのは、たぶんせいぜい今の朝刊・夕刊程度じゃないかと思う。けれどもWeb上で新聞社が本気で情報を発信しようとすれば、今の朝刊に掲載されている記事の10倍くらいの分量はコンスタントに発信できるだろう。Web上には紙幅の制約などはないから、もっとたくさんの情報を毎日毎日発信していくことも可能だろう。となると、むしろ制約がないために、「1日のニュース」を把握することができなくなってしまう。つまり、「一覧性」が失われてしまう、と思うのだ。

とりりんさんのおっしゃる手軽さももちろん紙媒体の特性だけれど、情報の視点や分量といった点での「一覧性」も紙媒体の特性だと思う。その特性が生きてくるのは、たぶん総合性を売り物にしている全国紙のようなものだと思う。


まあ、なんだかんだ言っても、結局新聞取ってない奴の言ってることなんですけどね。

追記

くろひょうさん、20日分の日記でも「紙媒体」に触れていただいた。うん、てっしは要りますよ、必需品ですよ、いろいろと。

あと、僕の個人的な立場として、紙によるテクストの保存が千年以上も続いたということへの意識もあるんだろうなあ。