人文系研究者の海外流出

今日は、韓国に2年の任期で専任として赴任する日文の人の送別会だった。

その人と僕は、日本思想史の大家である先生の大学院での出講の授業を受けていたときに知り合った。その人は韓国に2年間ほど留学していたのだが、日本に帰ってきてから、専任の話があったようだ。

飲み会では、やっぱり就職の話にもなり、院で一緒だった先輩がまだほとんど誰も大学に就職していないということで、日文も日本史も一致した。でも、その飲み会ではやはり日文で、5月からタイの大学に赴任するという人もいた。

日本史(中世)ではまだ海外に就職したという人の話はあまり聞かないが、日文ではすでにそういう流れになってきているのかもしれない。もちろん「たまたまだ」と日文の人は言っていたが、同じ大学で二人も海外に赴任する人がいるのは、必ずしも「たまたま」ということでは説明できないだろう。

どう考えても、人文基礎科学系の若手研究者は職がない。いまや30代後半でも定職がないという状況はざらだ。もちろん、研究者そのものの増加ということはある。そして優秀な研究者はやはりある程度は早いうちに就職が決まるのも確かだ。

けれども、研究というものは優秀な一握りの研究者だけがやっていれば進展するというものでもないだろうし、30代後半や40代にもなって定職がないという状況がごく普通に見られるというのはやはり異常な事態だ。

日本の政府がこれ以上人文基礎科学系の研究を冷遇する政策をとり続けるのであれば、いずれは日本史や日文でも「この分野に関してはアメリカが主流だ」というような時代が来るかもしれない。あるいは、人文系研究者人口そのものが減少していくのも遠い将来のことではないような気がする。