大学と寮。

大学において寮を運営しているかどうか、また寮に力を入れているかどうかにはずいぶん差があるとは思うけれど、日本では、学生の大半が寮に入ってる大学というのはそれほど多くないのではないかと思う。けれども、今の大学や大学生が抱えている問題の一つの解決策として、寮の充実は有効なのではないかな、と思うことがある。

まず、奨学金的なメリット。特に都市部の大学では、一人暮らしの学生が生活を営むのに、住居費や光熱費などの固定費だけでおそらく5万から10万くらい必要になってくるだろう。学費と合わせると、月に15万から20万は必要になろう。学費は減免制度などの制度改革で何とかなるにしても、個々の学生の生活の面倒までみることはむずかしい。その点、わずかな負担で入れる寮があれば、学生は親の経済力に左右されずに進学し、勉強できる。

それから、共同生活を営むことができるというメリット。就職してからは、日常的に他人と共同生活を営むような機会は、ルームシェアなどを除けばほとんどなくなるだろう。ほとんどの人は、他人と生活を共にすることのないまま大人になる。一人一人の暮らしにそれなりに関わりながら暮らしていた昔に比べ、現在では自分の家が子どもを厳しくしつけているのか、あるいは甘やかされて育てられたのか、相対的に自覚する機会はないままだ。共同生活を営むことによって、どんな家庭で育ったにせよ、それなりの社会性を身につけることができると考える。

ある程度以上の大きな大学では、学生がたくさんいるが故にかえって孤独に陥りがちになるという側面も併せ持っている。大学に入ってから引き籠もってしまう学生も、おそらくそれなりの数にのぼるだろう。寮生活によって、引き籠もってしまう学生がいくらかでも救えることになると思う。さらに、他人と生活を通じて触れあう機会は、一般的には大学時代が最後だと思う。この期間の一部だけでも他人との共同生活を営むことは、その後の人生にとって大きな経験になると思う。

だからといって「共同性が重要だ」などと変に説教臭い精神論に裏打ちされる必要などないし、学校が全寮制にすることなどない。それでは、大学のもつ自由さというものが失われてしまうと思う。一日中資格試験の勉強をしていたいヤツはしてればいいし、麻雀打ちたいヤツは仲間を集めて打てばいい。飲みたいヤツは飲めばいい。いわゆる昔の下宿屋みたいな存在が大学の周辺にあって、大学の補助によって成り立つ、というのが一つの理想かな。

どうも今僕のいる大学は、キャンパス周辺の土地を次々と買収しているようで、どうやら学生街を形成したいらしい。けれども、土地を買ってもやってるのはハコモノを建てることばかり。そうじゃなくって、学生を住まわせなくっちゃ、活気ある学生街にはならないのに。