大晦日

晦日だ。今日の「のぞみ」で帰省するのだが、まだ年賀状を仕上げていない。

昨日は大掃除をする予定だったのだが、一昨日の晩の飲みが結構こたえて昼過ぎまで眠ってしまったため、結局何もしないまま時が過ぎていった。そしてこのざまだ。
まあ、どうせ一人暮らしだし、大掃除は年明けになってからでいいや、と言い訳してみる。

昨晩(と言ってもずっと起きているのだが)はテレ東で「ラストエンペラー」をやっていた。あいにく帰宅が23時頃だったので、溥儀が満州国皇帝になる辺りからしか見られなかった。テレビ用だから仕方ないのかもしれないが、やたらとハサミが入っていた。特にエンディング、「ラストエンペラー」と言えばこの曲だろう!、ってな部分がばっさりカットされてたのにはがっかりきた。

それにしても僕は「ラストエンペラー」に関しては何度も見たつもりでいたのに、改めて見てみると、ストーリー的な伏線(たとえば「Open The Door!」という溥儀の台詞)とか映像なんかを、ちっとも見てなかったことに気づいた。

特に今回見て印象に残ったのは、満州国皇帝即位記念パーティーで、溥儀の妻婉容が飾ってある花をむしり取ってむしゃむしゃと食べ出すシーンだ。僕はてっきり、彼女がアヘン中毒になってしまったことを暗示させるためのシーンとばかり思っていたが、改めて見てみるとどうも違ったようだ。

このシーンは、坂本龍一扮する甘粕の「本番」という掛け声とともに始まる。その直後、関東軍司令官の一行が会場に入ってくる。満州映画社の甘粕、そして満州国の実質的な権力者にとっての「本番」は、ただのパーティーの光景ではなく、関東軍司令官に溥儀が謁見する場面でなくてはならなかったのだ。そして甘粕はパーティー会場2階から、見下ろすようにカメラを回す。このシチュエーションも、この国家で本当に力を持っているのが誰であるのかを暗示させるような構図だ。

婉容が花を食べ出すのは、こういった光景を見たあとのことだ。つまり花を食べるという異常な行為は、中国人である彼女にとって、日本の傀儡政権としての満州国への精一杯の抵抗だったのだ。

しかもこのシーンの最後には、カクテルグラスを取った彼女が「皇帝」溥儀に向かって「皇帝陛下に一万年の栄光を!」と、叫ぶように杯を捧げる。皆がその声につられて杯を捧げている中、彼女だけが「皇帝」に背を向けてパーティー会場から去っていく。


こういうことにはちっとも気づかないまま、”清朝の”即位式なんかの派手なシーンばかりを僕は記憶していたに過ぎないのだなあ。またちゃんと見なくては、と痛感した。


今年はこれが最後の更新。新年は3日に帰京するので、3日か4日に更新予定です。来年もどうぞよろしくお願いします。