オリオン座

飲んだあと、中央線の上り最終電車に乗って、途中の駅から深夜バスに乗った。深夜バスは、夜中の12時頃以降、ちょうど僕みたいに飲んで帰る人をターゲットに、運賃を2倍(!)とって走るバスである。それでも、タクシーで最寄りの駅に帰るよりはずいぶん安いので、文句は言えないのだが。

深夜バスは僕の最寄り駅近くまでしか行かないので、そこから駅の駐輪場まで10分ほど歩いた。日中は結構暖かいとはいえ、夜になればぐっと寒さが厳しくなる。そのかわり、晴れた夜空の星はきれいだ。東京とはいえ、オリオン座やいくつかの明るい星くらいは見える。

ふと、去年地元の友人の結婚式の後見上げた夜空を思い出した。式の後、男女数人のグループでカラオケ屋に行った帰りのことだった。星の数が、東京とはまるで違っていた。オリオン座のまわりには、とてもたくさんの星が見えていた。

「ほんとに星がきれいだね。」

と脇にいた女の子に言ったのだが、地元を離れたことのない彼女は星よりも帰りの車のことばかり心配していた。地元を離れ、今では福岡や大阪、東京にいる男どもだけが空を見上げていた。

僕も高校の頃には、この星の下で部活帰りの自転車を走らせていたはずだった。一度だけ、家へ登る坂道の途中でやっぱりオリオン座を見たような気がした。ちょうど今ぐらいの季節だった。

満天の星空を気に留めないでいられることは、一つの幸せなのかもしれない。