部屋の整理

部屋が散らかっている。

金曜日に北海道からやってきた友人を泊めるために、スペースだけは作った。だがうずたかく積まれている書類などを、いざ本格的に整理しようとなると、いったいどこから手を付ければよいのか皆目見当もつかない。

それでも少しずつ始めはするのだが、結局「継続作業」ということで一日が終わってしまう。そしてしばらくは片づけに時間をとることもできず、また本や書類が沈殿していってしまうのだ。


物がない暮らし、というのに憧れることもある。よく女性雑誌なんかで特集される「シンプルな暮らし」ってなやつだ。きっとしばらくの間はさっぱりした気持ちでいるだろう。余計な物に心を動かされることもなく過ごせるのだから。

けれども、そんな暮らしが本当に面白いのだろうか。僕にとって部屋の中の溢れんばかりの物は、すでに僕の記憶の一部だ。忘れかけていたものを発見することによって自分の軌跡を再確認する、部屋の整理とは案外そんなもののような気がしている。

逆に言えば、物がない暮らしというのは、過去の記憶を留めない暮らし方だ。確かに過去に縛られることはないかもしれないが、そのかわり自分が過去にもっていたいろいろな可能性を捨て去っていくことでもある。

過去の記憶に埋もれて身動きが取れなくなるのはいやだが、過去があったという記憶さえ失われてしまった人生に、いったいどういう意味があるのだろうか。


結局僕はまた、中途半端に整理された部屋で暮らすことになりそうだ。