佐賀城本丸歴史館。

鍋島直正の時代に、江戸中期の火災で焼失して以来100年ぶりくらいに再建された佐賀城本丸御殿。大正の頃に大半が撤去され、藩主の表の御座所のみが移築されて公民館として使われていた状況だったのを、御殿の「表」の部分の復元に際してもともとの位置に再移築。復元された御殿は内部を歴史資料館として整備したもの。

コンクリート製の外観復元ではなく、天保期の指図と大正期の古写真とに基づき、内部まで木造で復元した本格的な復元建築。昨今の状況だと、箱物を作るための外観だけの復元にとどまりがちなところ、建物を木造できちんと復元したことには敬意を表したい。このおかげで、建物そのものに価値が生み出されたことは意義深い。

展示は、木造によって復元された室内という制約の中、いろんな工夫をして展示スペースを確保している。正月明けに行ったせいか、ボランティアの方々の丁寧な説明があり、不親切になりがちな建物そのものの展示を充実したものにしていた。

率直に言って展示スペースはさほど広くはないものの、こういう空間の場合、建物をどう見せるかというところで工夫をした方がいいように思うので、展示スペースがそれほど確保されなくても、それはそれで仕方ないことだと思う。大広間である「外御書院」など、本丸御殿ならではの空間の利用、見せ方を、いろいろと考えていってもらえると、この復元建築をさらに活用できるなと感じた。

その意味で、鍋島家独特の正月飾りなどは、ちょっとしたことだけれど、本丸御殿の見せ方としては、建物の魅力を生かしたおもしろい試みだと思った。建物が十分に魅力的なので、歴史系施設としてこれからどのように運営されていくのか、楽しみにしたいと思う。