「さよならみどりちゃん」

南Q太原作のマンガを映画化した作品。監督は古厩智之、主演は星野真里西島秀俊

この映画の存在を知ったのは、ラピュタ阿佐ヶ谷に置いてあったチラシにふと目が留まったのと、TBSの深夜で「恋する日曜日」の再放送をやってた時に、やっぱりこの映画のCMが流れていたからだった。まんまと宣伝に引っ掛かってるな。でも、ちょっと興味を持って先ず原作を買って読んで、その後8月下旬からだという上映を待ってた。

けれど、ふとネットで目にしたニュースで、スポーツ紙なんかで「星野真里初ヌード」とか騒がれちゃってたらしくて、まるでそんなこと考えてなかった僕はちょっと引いた。どう考えても内容は女子向けだから、なんでこんなプロモーションの仕方するんだろうとちょっと疑問。

で、今日は12時に新宿に仕事を持ってって、上映が13時10分からだったので少し休もうと歌舞伎町の辺をぶらぶら。ここで後から怒り心頭の事件が起こるわけだが、とりあえずそれはおいといて。館はおっきなわりにはぱらぱら、という感じ。この映画の本来の客層たる女の子がちらほら、あと男も。それから謎のおっさんおばさんが上映中に出たり入ったり。うざい。そもそも、なんで歌舞伎町での上映なのかも、正直意味不明。渋谷とか中央線沿いとか、そういうミニシアター系のところでやればいいのに、と思った。

内容は、この辺にあるんだけど、かいつまんで言うと、主人公のゆうこ(星野真里)はユタカ(西島秀俊)と寝ちゃったあとで、ユタカに今は離れたところにいる彼女がいることを知る。で、ユタカと同じ店で働くたろー君(松尾敏伸)や若くてユタカのことを好きな優希ちゃん(岩佐真悠子)といろいろ……てなお話。

原作では、ユタカはもう少し線の細い、軽い感じだったんだけれど、映画ではもっと男としての質感が出てる感じ。あと、原作よりもちょっと重いというか、男としての質感が、ちょっと怖さに結びついてるような、そんな気がした。ゆうこは、いろんな評判はあるみたいだけど、僕は彼女で別にいいんじゃないかなあと。

以下はネタバレ注意。


原作では、ゆうこの独り言的な言葉で説明されていた感情や描写が、映画では映像で表現されてて、そこら辺はていねいに作ってあるなという感じがした。今になってちゃんと見とけばよかったなあと思ったのは、最後のあたりのシーン。ゆうことユタカがHして、その後ゆうこが「あたしのことをもっと好きになってよ!」って言ったにもかかわらず、ユタカはゆうこの方を一切振り返らずに服を着て、(確か何も言わないまま)ゆうこの部屋を出て行くってシーン。ここはけっこうていねいに描写されてて、とくにゆうこは裸でいるのに、ユタカはゆうこにずっと背中を向けたままっていう場面を、ゆうこの視線(=カメラ)で切り取ってる画。これは原作よりもいいんじゃないかなあと思ったところなんだけど、なんと、僕は突然睡魔に襲われて、それまで普通に見てたのに、20秒くらい意識が飛んじゃって。だから、そこにどんな描写がこめられていたのか、いまいち理解しないままスルーしちゃった。いちばんいいシーンなのにこのていたらく(笑)

あと、原作にはなかった、ユーミンっていうか荒井由美の「14番目の月」を歌うシーン。あれもよかった。その後、森村愛子のカバーが流れてエンディングロール、という流れになるんだけど、この辺もよかったなあ。映画館でもいいんだけど、もう一度、家で一人で深夜に観たいなって感じた。

これは原作も含めての感想なんだけど、ユタカは、基本的には軽い男なんだけど、ゆうこに嫉妬する、独占欲のある一面もあって、映画ではそれがもっと強調されてたように思う。そこら辺が、男としての質感、あるいは重さだと僕が感じたところ。年のせいもあるのかな。原作では、大学生か、せいぜい23、4にしか見えなかったけど、西島秀俊は僕と同じ年、っていうか、学年はひとつ上だもんな。それであんな感じだったら、そりゃ明らかにだめんずだわ。

でも、スナックのバイトはともかく、「お前ソープで働く気ない」っていうユタカのセリフ、これが結局はゆうこがゆたかから離れてしまうきっかけになるんだけれど、そんなセリフをさらっと言えるのって男としてどうよ?と思ってしまうのは、僕だけかなあ。

ユタカ、ワガママすぎて、僕は男としてちっとも共感できないんだよなあ。まあ、原作も映画もゆうこ目線だし、「ユタカの肌には磁石がついていて、だからわたしは手を振りほどくことができない」から、つまり感覚とかHの相性とかそういうのでゆうこはユタカとつながってるのだし結局はそこが「好き」なんだから、ユタカがどうしようもないワガママなヤツだとしても、それはそれで物語として成立するんだろうけれどなあ。

だからこそ、映画ではゆうこに嫉妬するユタカの姿なんかを描いていたのかも知れない。でもそのせいで、さっきも書いたけれど、映画のユタカはなんか「重い」んだよなあ。僕はあんまり独占欲とか無いから、むしろ原作の、誰がいちばん好きかとかを聞かれて困ってるユタカの方が、彼の行動からすれば理解できるし。ま、たろーのゆうこへの接近に対しては独占欲を発揮してるけど。

あー、別にそんなヤマがあったりとかいう映画じゃないんだけど、だからこそ、人物とか描写の機微をちゃんと読み取るために、も一回、じっくり観たいなあ。