安全。

もう15年近く前の話になるけれど、僕が初めて駅員バイトに行った時、ガイダンスを担当した駅長から、「駅員はなんのために駅にいるのか」ということを質問された。僕は、きっぷ切りや運賃・料金の収受などしか思いつかなかったけれど、彼は「駅員の一番大事な仕事は、安全を守ることだ」と言った。

当時の僕には、その言葉はあまりに抽象的すぎて、いったい具体的には何をすればいいのか、といったことしか思いつかなかった。けれどもこんな状況の今なら、駅長さんの言わんとしていたことも理解できる。

こう極論してしまうと語弊があるかもしれないが、駅員にとって接客やサービス精神などはおまけでしかなく、根本の任務は乗客の安全を守ることだ。その意識を持って業務に臨むということは、営利企業の一社員としてではなく、社会を陰で支える鉄道マンとしての誇りなのだろう。その誇りは、鉄道に携わる人たちの心の中にきっとあるだろうし、その誇りを忘れて欲しくはない。むしろその誇りを新たにしてもらいたい。