材木の匂い

一歩も外に出ないのはどうかと思って、夜、近くのスーパーまで買い物に出た。帰りに、建築中の家の近くを通った。木の匂いがした。その匂いが、ふっと、自分ちの実家を建てる時の記憶を蘇らせた。

その匂いを感じているあいだは、情景が頭の中に廻っていたのに、その匂いから離れてしまうと、記憶の中にだけあったその情景も消えていってしまう。思い出そうとしても、増築工事の時の記憶と一緒になってしまって思い出すことができなくなる。明日もし、そこの道を通ることがあったら、またあの頃のことを思い出すのだろうか。