「幻のロシア絵本」

でも実は、僕の目的は朝香宮邸ではなくて「幻のロシア絵本1920-30年代」という展覧会の方だった。

芦屋に住んでいた画家吉原治良の遺品の中から発見された、ソビエト成立期のロシアで刊行された絵本コレクションを中心に、当時のロシア・アバンギャルドの影響を色濃く受けたロシア絵本を一堂に集め、その成立と展開、そして衰退とを展覧しようという企画。

僕自身は、ショスタコーヴィチの音楽は聴いてるし、エイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』とかも見たことはあったけど、ロシア・アバンギャルドの流れっていう把握のなかで見たことはなかったかもしれない。それを絵本という形で切り取って見せたところもおもしろい企画だなあと思った。

展示は、ロシア・アバンギャルド以前の新たな絵本の動きを示した後、革命後のソ連における斬新なデザインの絵本の数々を紹介し、最後に当局の規制が強化されてそれまでの革新性を失っていく衰退期までを振り返っている。

僕はあんまり絵は知らないんだけれど、これらの絵本がデザインとしてかなり斬新だったんだろうなっていう印象は持った。現代の目で見ても、決して古くさいような印象は持たなかった。1920年代頃のこういう運動って、後世にどういった影響を与えてるんだろう?アール・デコ様式を皇族が自分の屋敷に取り入れちゃうような流れとこのアバンギャルドとは、どういった関係にあるんだろう?僕はあんまりその辺を知らないけれど、ほぼ同時代のことだと考えると、かなり興味深いテーマだなという気がした。