個人の好き嫌いと倫理

最近、ニッセンのCMで「幼稚園の先生がね、♪昔の彼氏にちょっと似ているの〜♪」というのが流れている。セリフやシチュエーションとバックに流れている音楽とがちょっと気になるってくらいの印象を持っていて、他の人はどういう印象を持っているのかなあとちょっとググってみた。そこで行き当たったこちらのサイトに紹介されているこういう意見

なんだかなあ。僕自身はこのCM、微妙なところを突いてきたなあと比較的好意的に受けとめていて、まあそれでも女の人がどう考えてるのかなんて結局はわかんないけれど、そこまで明確にもならない感情だろうし…なんて事を考えていたんだけれど、「社会倫理的にマズイ」だなんて思ってもみなかった。

こういう反応がなんとなくイヤなのは、個人の好き嫌いが「社会倫理」と混同されているところ。既婚者である自分はこういう感情を抱くことなんて無いといったような形で、あくまで個人的な感想の表明であるのなら理解できる。けれども、あくまで個人的な好き嫌いにしか過ぎないそうした感情の問題を、あえて「社会倫理」にまで飛躍させているところに、自分の感情を相対化できないまま「みんな同じことを考えているはずだ、いや、考えねばならないんだ」といった傲慢さを感じてしまう。

自分が理解できないことは悪いことだ、というのは、社会から多様性を排除しようとする第一歩だと思う。こういう意見には、そうした傾向が感じられるからこそ、僕は嫌な感覚を持つのかもしれない。

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ただなあ、こう書いてたとしても、もしかすると僕自身、時代的な感覚に制約されているだけなのかもしれない。少なくとも今は、こういう感情を抱くことすら「倫理的に」否定するような世の中がくるなんて思ってもいないし、そんな世の中ちっともいいとは思えないけれど。