ジャパネットたかたの社会的役割。

以前、調査先でおじいさんが、「最近パソコン買ったんですよ、ジャパネットたかたで宣伝してる、ほら」みたいなことを言ったことがあった。その時は、「スペックもたいしたことなくて安くもないテレビ通販のパソコンなんて……」と思っていた。

けれども、よくよく考えてみると、その地域ではそもそもパソコンを売ってる店そのものがない。そういった情報を提供する本屋もない。そもそもお店なんて、食料品店が2軒、酒屋が2軒、釣具店が1軒、あとは郵便局だ。「ネットがあるじゃないか」と言う人もいるかも知れないけれど、それは東京をはじめとする都市で情報リテラシーを鍛えられたからこそ言える言葉であって、知らないからといって責めることはできない。ネットをやるための環境だって、整えられているとは言いがたい。そのおじいさんがパソコンに触れることなんて、その地にあっては皆無に等しい。

しかし、そんな田舎でもテレビは映る。そして、そのテレビで放送されてる商品情報こそが、「ジャパネットたかた」なのだ。デジタルデバイドが指摘されてすでに久しいが、その格差をフォローする役割を、あの独特の社長の営業が担っている。社長や企業自身が意識してなくとも、ただの営利活動ではない社会的役割の側面がテレビの通販にはあるのだ。そのことに気づいた時、あの社長の姿が、少し違って見えた。