残された時間。

14年前の今日、僕はまだ二十歳になっていなかった。その頃の僕は、死を目の前にしても、自分に残された時間があとどれくらいなのかなんて、考えてもいなかった。自分以外の人の死と自分の死とを結びつけて考えることなんて、まだできなかったのかもしれない。

もし、あと10年で僕が消えてしまうとしたら、僕は何をすればよいのだろう。それは子どもの頃、電気を消した真っ暗な部屋の布団の中で考えていた、漠然とした“死への恐怖”からくる想像ではなくて、もっと現実的な、僕自身の生き方を問う、そういう思い。

父は14年前の今日、44歳になって一月も経たずに、この世を去った。もし僕が、父と同じ歳月だけしか生きることができないのだとしたら、僕に残された時間は、あと10年しかない。父が亡くなってから14年のあいだ、僕は何をしてきたのだろう。そしてこれからの10年のあいだに、僕はなにができるのか、そして、何をすべきなんだろう。

ちょうど父が亡くなった朝の9時半頃、頭痛を抱えながら、僕はそんなことを考えていた。