西武鉄道の光と陰

堤義明氏が逮捕された。長いことアルバイトしていた会社の会長だった人が逮捕されちゃったことには、やっぱり感慨がある。

以前にも書いたことがあると思うけれど、堤氏は少なくとも僕の知る限り、社内ではオーナーと呼ばれていた。普通、保守的な体質の会社だと、社内の肩書きが重んじられるもんじゃないかと思うんだけれど、少なくとも堤氏に限っては会長とかそういう役職名じゃなかった。

その時にも少なからぬ違和感を覚えたけれど、結局堤氏は会社を自らの所属する組織ではなく、自らが所有する物としてしか考えていなかったのではないか。そのことに、今回の事件の問題点は象徴されているんだろうなあという気がした。

それから、一部では特集なんかで取り上げられているようだけれど、堤氏が鉄道を視察する際には、駅の管理職は通過する駅であってもホームに出て、オーナーに対し敬礼をしなければいけなかったようだ。その資料映像を見て僕も思い出したのだが、普段、駅では清掃担当になった人がホームなんかを掃除するのに、オーナーが来るという時に限って、助役や駅長といった管理職の人が清掃をしていた。

僕がうかがい知ることなんてそのくらいだけれど、単にそれだけのことからも、社内で彼が明らかに特別の存在として意識されていたことはわかると思う。


ただ、彼が常に父の遺訓に従ってきたということを鑑みるならば、彼の独裁ぶりも、たとえばライブドアホリエモンのような、単に彼の経営者としての志向ではないような気がする。むしろ先代の創業者の意志を忠実に守ってきた、超保守主義的な側面なのではないか。経営を父から預かったという意識が強烈だからこそ、創業者の意志を正統に受け継いでいない他人に経営のことを介入させない、という論理になり、「自分以外に考える人はいらない」という強烈な独裁体制に繋がっていくのではないのだろうか。