欲望。

失恋 (新潮文庫)

失恋 (新潮文庫)

ひとがひとを「信じたい」と思ったり、「救いたい」と思ったりするのは、すべて自分勝手な欲望なのだろうか―。

(中略)

そんなわけねえよ……。

今度は心の中だけで呟いた。

ひとがひとを信じたかったり救いたかったりする思いのすべてが、自分勝手な欲望であるわけはなかった。そんなわけはない。そんなことがあるわけはない。そう思った。

食欲とか性欲とか、あるいは金銭欲とか、そういう典型的ないわゆる“欲望”っていうものよりも、「ひとがひとを「信じたい」と思ったり、「救いたい」と思ったりする」ことの方が、欲望としてはより欲深いのかもしれない。

それでも「ひとを信じられるかもしれない・救えるかもしれない」という希望があるからこそ、やっぱり人は欲望することをやめられないのだろう。


なんとなくお風呂のなかで本を読みたくなって適当に本棚から手に取った一冊、その最初の一編。読んでるうちにちょっと汗が出てきた。これまでお風呂で本読んだことなんてなかったんだけれど、これって新陳代謝にはいいかも。