歴博の企画展に行ってきた。

今やっているのは、「日本の神々と祭り−神社とは何か?−」というテーマの企画展。僕の研究テーマに相当関係する内容だから、これは行かねば!とずっと思っていたんだけれど、なかなか時間が取れず、たまたま今日は月曜にもかかわらず開館しているということで、この機会にと思い行ってみた。

今回の展示は、島根の出雲大社杵築社)、広島の厳島神社、京都の八坂神社がメインで、それに伊勢の遷宮関係の展示が少し。八幡はないけど、神社の選択としてはバランスが取れてるし、いい感じ。

僕がおもしろく感じたのは、杵築社の二つの模型だった。一つは、豊臣秀頼が造営した、神仏習合色の濃い社殿群で、三重塔なんかもある。柱はたいてい朱塗りで、けっこう派手派手しい。それに対して寛文の造営では、仏教的要素を排除し、神道色を強調した社殿群となっていた。朱なども極力抑えられており、近世初期との差異は明らかだ。この復原模型がかなりの部分で史料に忠実だとすれば、杵築社が近世において「古式ゆかしく」変貌したことをビジュアルで対照的に示した、とてもわかりやすい展示だろうと思う。

ほとんどの人が、神社の空間は古代以来「神道」的で清浄な空間がずっと維持され続けてきたと思っているようなんだけれど、決してそんなことはなくて、中世から近世のある時期までは、相当に仏教色が濃い。ただ、明治維新時の廃仏毀釈によって、現在ではそういった仏教的要素は排除されてしまっているので、やっぱり博物館などでないと中世のありようを提示することができない。そういうところを、神域の模型による復原という形でわかりやすく展示できたのはよかったことだと思う。

ただ、文献史方面の僕としては、神社の社会経済史的な側面や信仰の社会への受容、とくにその中世的なありようとその変遷といったことを、トータルに提示していこうとする方向性が弱いように感じられた。言い換えるなら、個々の展示物群に関するテーマはあるんだけれど、それらの論理的な連関性が弱く、展示全体を貫く大きなテーマが見えてこない、と言えるように思う。

たとえば杵築社の二つの模型を示すにしても、必ずしも仏教的色彩の有無などといった歴史的変遷を積極的に打ち出そうというような意図は、あまり感じられなかった。祇園だって神仏習合なんだから、その辺りとのテーマの共通性などももっと打ち出していけるはずだし、あるいはもっと建築にこだわってみたってよかったんじゃないのかな。展示品そのものにも、今ひとつ統一的なテーマを感じることはできなかったし。

今までの神社や神祇に関する歴博の展示は実によかっただけに、今回の展示はやや残念。もう少し、歴史的な展開・変容といったことをテーマとして組み込んだ展示にするか、あるいは完全に優品主義で見せていくか、テーマを決めた方がいいように思う。