東京国立博物館「伊勢神宮と神々の美術」

今日は東博でやってる特別展に行ってきた。
もうすぐ伊勢の式年遷宮があるので、それにあわせた興行的な展示なんだと思う。
日本のもの作り情報館
東京国立博物館

お盆の最終日だし大して人もいないだろうと思っていたのだが、それなりの人が入っていた。さすがに東博でやる特別展なだけに、一番最初に真福寺本の「古事記」を持ってきてたり、天理の「日本書紀」やら東博蔵の「延喜式」、歴博の「春記」、伊勢の曼荼羅や神宮文庫の古神宝ももりだくさん。

ただ、全体的な感じとしては、ボリュームとメリハリに乏しい感じがした。さらに4つの部屋のうちの第3室は近現代の神宝で、ここまで来た時「え、もう終わり?」と思ってしまった。しかしそのボリューム感のなさを補っているのが、第2室の宗像社や鶴岡八幡宮の神宝群と、第4室。第4室は、豊後の奈多宮に残された神像や、石清水で最近見つかった神像群などが展示されていて、小ぶりな部屋ではあったが充実した内容だった。石清水の神像はたぶん初めて見たな。

神社関係の展示って、こないだの歴博の時にも思ったんだけれど、展示に歴史的な展開があまり見えてこない。例えば、図録には文章としてあったが、式年遷宮は16世紀、つまり戦国時代には中断し、秀吉の頃に復活している。しかしそうした時代的な変遷が、展示では今ひとつ追いにくいのだ。また造営の社会的な広がりもよくわからなかった。せっかく古記録を出しているのだから、造営儀礼を復元するとか、伊勢造営のために徴収される役夫工米賦課の問題とか、そこら辺はいくらでも広げていくことができるだろうに、そういう、展示から遷宮のプロセスやその様相を組み立てていくような展示内容など、僕が気づいた限りでは一切なかった。

これは、神社の、特に中世における歴史学的な研究が遅れていることが大きな背景としてあると思うのだが、もう一つは神社サイドがあまり歴史的なアプローチを好んでいないからなんじゃないかという気がしている。東博はどちらかといえばモノを見せるところで、歴史的な復原というのはあまりやらないとは思うが、他所にも巡回する展示なんだから、もっと歴史学的なアプローチによって遷宮や伊勢の諸相を見せるということをやってみてもよかったのではないかという気がしている。

もう一つ、それは遷宮のことを扱ってるのに建築関係の展示が一つもなかったこと。いくら東博だからって、遷宮扱うのなら建築関係の展示は必要だよなあ。

というわけで、もう少し入場料と図録の値段が安かったらなあとは思うのだが、第4室の神像群があったので僕個人としてはおおむね満足。ただ、神社の研究を進める必要があるなあという気はした。

その後染付の方には立ち寄らず、考古展示と本館の展示を見た。予想外に充実していたのが考古の展示で、縄文や弥生・古墳時代くらいの数多くの遺物を見ることができた。また中世では、皇嘉門院の菩提を弔うために埋納されたと推測されている経筒が興味深かった。「玉葉」に記事があるらしいのだが、どうせならその記事も示してもらえるとありがたかった。