「226」

五社英雄監督、1989年。出演は萩原健一三浦友和竹中直人本木雅弘ら。製作は奥山和由

ケーブルテレビでやってたやつを録画して鑑賞。仲代達矢杉山元参謀本部次長)とか丹波哲郎(真崎甚三郎陸軍大将)とか金子信雄(川島義之陸軍大臣)も含め、キャストは実に贅沢。昭和初期の東京の情景とかも丁寧に再現してるなとは思うんだけれど、残念ながらそれらが全然活かされてない。

二・二六事件なんて、本筋の反乱軍の動き以外にも昭和天皇の動向とか秩父宮平泉澄北一輝、あるいは陸軍と海軍との温度差、貧しい東北地方の実態、反乱後の軍事裁判など、映画にするには絶好のサブストーリーが満載なのに、そういうのはほとんどカットか通り一遍に描かれるだけ。その代わり一番クライマックスに来ているのが青年将校らと妻や恋人との回想的シーンって、いったいどういうことなの?

こないだ見た「日本のいちばん長い日」のような骨のある映画とは大違い。反乱が失敗したのが明らかになった辺りでまだ1時間しか経っておらず、「この先もうおもしろいところあんまりないよな」と思ったが、果たしてその後の展開は予想通り、全然おもしろくなかった。

反乱軍将校それぞれの私生活なんて、少なくとも二・二六事件を全体的に描くのなら、いらない。そんなところに安田成美やらの綺麗どころを並べたって、本筋のテーマを深めることなんてできず、イメージ映像になるだけだ。だいたい、青年将校たちは農村の貧困などを憂いていたはずなのに、恋愛にうつつを抜かしてるなんて、二・二六事件の映画としてどうなのよ。そういう意味では、なんか映画の作り方として間違っているように思う。監督が悪いのか、脚本が悪いのか、それとも製作サイドが悪いのか。おおかた、女優も使えとごり押しした(された)のだろう。製作時期がバブルの最中だから、その風潮に映画の演出などがかなり影響されたのかもしれない。

いずれにせよ、二・二六事件を知るならこの映画を見るよりウィキペディアの記事でも見てた方がよっぽどおもしろいんじゃないかって思えるくらいだってことで、一緒に見ていた相方さんと意見が一致した。これじゃあ役者が可哀想だよなあ。