訃報。

深夜のメール

火曜の夜。前日の高校3年の成績提出に引き続き、この日は朝から大学の卒論口述試験。試験では学生のためにレジュメを準備したこともあり、昨晩も布団では寝られなかった。ここ数日、たぶん2時間ずつくらいしか寝てなくて、だから火曜はようやくヤマを越えた感じだったので、数人での面接お疲れさま会では気持ちよく飲めた。もともと飲みの開始が9時頃だったのであまり時間もなく、2時間ほど飲んだ後、終電数本前の電車で帰宅する。水曜は午前中には何も予定がないので、ようやく睡眠不足が解消されるかと思いつつ風呂から上がると、深夜1時45分だってのに妹からメールが入っていた。

祖母の訃報だった。

慌てて電話してみると、その日のうちに通夜をやるということ。首都圏とは違い、火葬場もそんなに込んでるわけじゃないので、すぐにお通夜と葬儀をやっちゃうんだろう。ほとんど時間の余裕もなく行かなくちゃいけない遠方の人間にとっては非常に厄介なのだが、僕がリアルで体験できる範囲ではもっとも成分の濃い田舎なので、町内が第一、たぶん遠方の人間のことなど思慮の外なのだろう。

というわけで、水曜・木曜の予定はすべてキャンセルして九州へと向かうことになった。

幸いなことに、いつもなら僕の担当授業があるはずの水曜午後は、学校の都合で授業が休みになっていた。ここ数日バタバタしていたので、あまりきちんとスケジュール表を確認してなかったのだ。となると、授業は翌木曜の1コマだけしかない。水曜夜の研究会は欠席することにして、木曜夜までに東京に戻ってくれば、スケジュール調整を最小限に抑えることができる。こういう判断を、極度の寝不足と酔いのなかで下し、とりあえず寝ることにした(笑)

西へ飛ぶ

翌水曜日。寝不足解消には全然足りない4〜5時間睡眠で起床、さっそく移動のためのチケットを手配する。九州に行く用事があるなら、ぜひとも寝台列車に乗りたいところではあるのだが、今回ばかりはそうも言ってられない。ただ、通夜開始は18時だと聞いていたので、すぐに飛行機に飛び乗らないと行けないわけでもない。

飛行機では搭乗当日の予約はほとんど割引が利かず、長崎までの普通運賃はなんと3万9千円、往復割引の片道分でも3万6千円近くする。これだとソウルで相当贅沢できる額だ。さすがの高さに長崎便はあきらめ、福岡便を考えた。新幹線という選択肢も考えたのだが、スカイマークだともっと安くなるだろうと思い調べてみると、定価でも2万1800円、博多から長崎まで特急指定席の「2枚きっぷ」が片道当たり3000円だから、計2万4800円。長崎便の普通運賃より片道だけでも1万5000円も安くなるので、迷わずこのルートで往路のチケットを手配。復路はANAの特割がまだ使えるので、福岡‐東京便1万6800円プラス3000円。マイルも貯まるので、チケットはこれで手配。実はこれがその後、おもしろい出会いを生むことになった。

少し早めに家を出て、京急経由で羽田空港へ向かう。お昼は到着地で買うことにし、とにかくセキュリティチェックを受けて中に入る。スカイマークはターミナルビルから直接搭乗することはできず、バスに乗って駐機場まで行き、そこでタラップから乗車した。

機内に入って自席に着き、荷物を上の棚に収納していると、なんだか僕を呼ぶ声がする。うん?と思ってそちらの方を見ると、そこには何と学部の時の同級生が。しかも時々会って飲んでる仲間の一人だった。彼は、このあいだの飲み会に誘おうとしたらメールが通じなくって知らせることができなかった友人だった。ここで会ったが百年目という感じで、さっそく近況やメールが受信できなかった事情などを聞く。携帯電話を変更したので、メールアドレスが変わったらしい。今日は出張で九州入りするのだとのこと。彼の方はこういう出張が結構あるようだが、それでも移動中の飛行機で知り合いに会うなんてこと、そう滅多にあるもんじゃないだろう。まあ、何らかの縁があるんだろうな。彼とは、時間が合えば翌日に福岡で飲もうという話をして、空港で別れる。

さらに西へ

僕は空港から市営地下鉄で博多まで行き、博多駅で昼食を購入。ここ10年くらい、博多駅でお昼を買うなら駅構内のマイング名店街ってところにある「駅の魚屋 高田屋嘉兵衛」というお店でお寿司を買い、つまみなども揃えるというのが定番になっている。今回購入したのは鯵のお寿司。まあ時期的にはちょっとずれるんだけれど、そこそこ旨かった。以前5月に立ち寄ったときに買った鯵は旨かったなあ。この辺りは他にもお総菜系のお店がいくつかあって、車中で食事やちょっとおつまみを揃える際には非常に便利なところである。食料を調達したところで、博多駅から特急かもめに乗る。今回乗車したのはかもめ31号、ハイパーサルーンと呼ばれる783系特急電車を使用した列車である。


革張りシートの885系が主力である現在、こちらはやや古い車両であり、当初はハズレだなと思ったのだが、この車両、案外座席が深々としていてよい。革張りの車両にはないよさがあった。

車窓の景色を眺めつつ昼食。佐賀を過ぎるとすっかり乗客も少なくなったので、前の座席を向かい合わせにして足を伸ばす。車内販売のコーヒーを飲みながら、左手に広がる有明海の黄昏をぼんやりと眺めていた。




諫早に到着したのは17時5分。定刻通りだったので、通夜には十分間に合いそうだ。