センター試験と「祈年祭」。

新聞にセンター試験の問題が載ってた。今のお仕事はセンター試験とは関係ないので、たまたま新聞に載ってたら問題を見てみるというくらいだ。けれども、問題を作る側として眺めてみると、やっぱり全国規模の試験だけあって、単に知識を問うというのではなく、知識を運用できるようにそれなりによく練られて作問してあると思う。

ただちょっと気になったのは、大問1の神社や祭祀の問題の説明文。空欄アは祈年祭を答えさせる問題なんだけれど、その後に続くのが「それにしても、現代までお祭りが続いているのは、考えてみれば驚きだ」という文章。

「祈年祭」はもともと律令国家の祭祀で、朝儀としては確か中世前期まで残っていたと思うんだけれど、その後廃絶、宮中祭祀として復活したのは明治以降だ*1。そしてそういう国家神道体制のもと、全国の神社で祈年祭が執り行われるようになったわけで、今残ってる祈年祭は近代に創始された祭祀の名残だろうと思う。

古代や中世の文脈で「祈年祭」を取り上げておいて、「現代までお祭りが続いている」というのは詭弁だろうし、歴史的にも正確ではない。解答そのものには影響がないので、あまりそういうことを気にせず作問したのかもしれない。だが「ある高校生が書いたレポート」の形を取ってはいるにしても、神社に中世近世を通じて維持されてきた祭祀と近代の国家神道下で改めて創始された祭祀とをあえて混同し、高校生に仮託した形で印象論として書いてしまうのは、僕にはちょっと見過ごしがたい。もし意図的に書いてるんだとすれば、国家神道下の近代神社祭祀を「日本の伝統」だと思わせるような、けっこう悪質な印象操作だと言わざるをえない。

*1:國學院大學日本文化研究所編『神道事典』を参照。