新書バブル。

お見舞いに行った帰りに本屋に寄った。このところ忙しくてなかなか本屋に立ち寄ってなかったんだけれど、今回ぶらぶらしてて、改めて新書の刊行点数の多さを実感した。けれども、正直「バブル」だよなあ。

以前は、ある研究分野やある人物・事象・思想などのエッセンスを知ることができると思って、比較的よく買って読んでた。もちろん今でも新書の基本コンセプトはこういうもんだと思うんだが、どうも最近はそういうのよりも、タイトルで手にとってもらうことに一番力を入れてるようなのがけっこう目に付く。そういう意味では、新書バブルなんだろう。

今日平積みで手に取ったのは、「学者のウソ」という本。買ってないのでリンクはなし。どんなもんかなあと思って手に取って開いてみたんだけれど、うーん、ちょっとひどいなあ。アカデミズムの権威に乗っかった通説の欺瞞を暴くってスタンスの本なんだけれど、それがどうにも。所詮立ち読みなんで印象批評なんだけど、たとえば少子化のウソを暴くっていう部分では、ある一人の説だけに全面的に依拠して通説はおかしいっていう議論になってて、あまり説得力がない。

ここは著者がどういう論理で「通説」を批判してるのか、ちゃんと読んでみないとわかんないなと思ったんだけど、さらにひどいのが、現在の「右傾化」の原因を考察している部分だった。なんと著者によると、それは「左翼のウソ」だそうだ。うーん、いくら著者の専門が理系だとはいえ、こうも社会分析をすっ飛ばした思い込みを活字にしちゃっていいんだろうか。

いやあ、専門で功成り名を遂げた人がトンデモな議論をぶちまける典型例だなあと思ってたら、何とこの本の著者は1970年生まれ。年は僕とほとんど変わんないじゃん。この人、こんな若い頃からこんな体たらくで大丈夫なんだろうかと逆に心配してしまった。

まだ若いんだから、こんなヨタ話を書き連ねてないで、自分の専門分野で地道にデータを集めて実証するって言うような手堅い仕事をやってくべきだろう。本来そうあるべきポジションの人がああいう本書いちゃうところに、「新書バブル」のもたらす弊害が現れているよなあ。