地歴未履修問題。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061024it14.htm
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ここら辺で言われている未履修問題だけれど、ちょうど僕の通ってた高校と同じような雰囲気を感じたので、この高校で起こった問題も、その構造をなんとなく推測できる。「公立なのに」とか「受験に必要なければ教養は必要ないのか」といった批判があるようだけれど、おそらくそういう批判は、当の被害者である生徒にはピンと来ないと思う。

こういった高校はおそらく、ともかく受験が全てであって、はっきり高校教育はそのための教育だと明言する教師もいるだろうし、生徒もそのつもりで通っているに違いないと思う。大都市部と異なって、地方都市に大学受験のノウハウを伝授する予備校はほとんど存在しない。しかし大学進学のニーズはある。そのニーズを満たすのが、地域の核となる公立高校だ。私立高校もあるだろうけれど、地方だとなんといっても公立だ。

僕の通ってた高校がそうだったが、高校入学当初から大学受験を意識したカリキュラムを組む。1年次から英数では習熟度別にクラスを分け、もっとぶっちゃけて言えば「ハイクラス」と「ロークラス」とに分け*1、進級時には文理・理社選択と成績とでクラス編成を行う。毎朝7時半から全員が補習授業を受け、夏休みもお盆前後の1週間以外、冬休みだと正月直前直後以外は午前中補習がある。補習を受けないという選択肢など、最初から僕らに示されることはなかった。また「補習」時間であるにもかかわらず事実上正規の授業が進められる。

特に3年次では夏の補習は朝から夕方まで、また1週間宿に缶詰にされて1日10時間も勉強させられる勉強合宿もあった。学年末試験は10月頃に終えてしまい、あとは試験対策演習授業一色。センター試験前には、元旦といえど模試受験。模試も学校で代ゼミ・河合・駿台・進研・旺文社と受けさせられる。

これでもいちおう「公立高校」だ。はっきり言って、教養の教の字もない、見事なまでの受験対策プログラムとしての教育だ。おそらく今ではもっと緩くなっているとは思うけれど、地方の進学校系公立高校なんてどこも似たようなもんだろうと思っている。こういう「公立高校」に身を置いていた人間からすると、今回の事件など不思議でもなんでもなく、「なんでこんなヘマやったんだろう」というくらいの感想しかない。

このクラスの公立高校だと、地歴科目を2科目必要とするような東大・京大といったところに進学を希望する生徒はおそらくごくわずかで、大半の生徒は地方国立大に進学するんだと思う。とすると当然、地歴は1科目取っていれば受験には対応できる。学校側としてもそれを十分に理解した上で、おそらく3年次実質的に1科目に絞り込んでいたところを、ここの学校はどういうわけか2年の頃から絞り込んじゃってたんじゃないんだろうか。

実質的に単位の選択制ではない高校において、高校側が卒業必要単位数をきちんと把握していなければいけないところ、それをミスしたのは重大な過失だ。けれどもこの問題は、必修科目の問題だけじゃなく、地方都市において大学進学のための受験勉強を担っているのが、予備校ではなく公立高校であり、教養だなんだといっても結局受験勉強体制を公教育で引き受けなければならないという問題に発しているとみなければならないだろう。

*1:実際僕のいた高校では教師自身がそう呼んでいた