別所平と田沢温泉。

というわけで、前に書いた記事の再現はあきらめて、また新しく記事を書き直すことにする。とりあえず、前には書いてなかった、先々週の日・月曜の旅行から。

せっかく有休を取ったので温泉に行きたい!という相方さんのご希望で、どの辺りにするかを考えていたんだけれど、そこで候補地として浮上してきたのが、別所温泉。周囲には文化財も多いし、東京からそんなに遠くないし。で、いろいろと調べていくうち、別所から一山越えた青木村の田沢温泉が、どうもいい感じでひなびているということを知る。どうやら旅行会社の商品には田沢温泉の宿は入っていないよう。そこで直接宿に電話を掛け、無事予約をゲット。

日曜日。見事な快晴。うーん、旅行日和。朝、家を出て、東京駅から新幹線で上田へ。まずは上田城を目指す。上田城は、櫓がいくつか残っていて、櫓門が復原されている。まずは資料館に行く。こぢんまりした、やや古めかしい資料館だけれども、思ったよりも展示は充実していた。そこで図録をゲットし、さらに本丸を目指す。門のところでは、なんだか撮影が行われた後だったようで、スタッフとおぼしき人々がお弁当食べてた。これ、この時はなんだかわかんなかったんだけれど、あとあと関係してくることに。

門の両脇にある櫓、明治に入ってからは売却され、遊郭として使用されていたらしい。昭和30年代に買い戻し、城の建物として再び整備されて今日に至っているようだ。この櫓、中に入って昇ることができる。小さな窓からは、千曲川とその先の別所平を望むことができる。今月は珍しかった、突き抜けるような快晴。本丸の石垣の下の広場では、若い夫婦が赤ちゃんを遊ばせている。幸せな風景だ。

本丸には、明治になって建立された真田神社がある。そこでおみくじを買ったら、なぜか地元の人が書いたとかいう『武士道とは』ってな本をいただいちゃった。とはいえ、サブタイトルには「三者三様」との語句。う゛ーむ…

城跡には、陸上の大会のアナウンスが聞こえる。「プログラムは…ページ、200メートル走予選第…組、……」。陸上の大会のアナウンスは、各種競技の記録を伝えなくてはならないため、短く切ってデータを淡々と伝えていくのが特徴。五月晴れの日曜にこのアナウンスが聞こえてくる光景。高校の頃の記憶が蘇ってくる。

その後上田に戻り、次に目指したのは大法寺。正慶2年(1333)の建立になるという三重塔を見に行く。実は僕は一度来たことがあるんだけれど、せっかくここまで来たんなら見ておきたいと思い、立ち寄ることに。バス停からてくてく歩いていく。集落から延びる急坂の上にそびえる三重塔は、こぢんまりとしてて、それでいて繊細な作り。ちょうどツツジの季節で、塔に華を添えていた。下の観音堂も、なかなかいい感じ。人も少ない。観光産業的にはあまりよろしくないのかも知れないけれど、僕らにとっては実に静かな気持ちで堂塔を鑑賞することができ、いい時間だった。

せっかくのいい天気なので、ここから青木村の中心地まで歩くことにした。田んぼの脇、集落の際を歩いていく。東山道の旧跡だという立札もあった。国道から離れているので、車の音もあまりしない。田植え前なので、水路からは“せせらぎ”というにはやや大きな音を立てて水が流れている。盆地の山の端に、少しずつ陽が下りていく。静かな里の時間。

青木村中心部に着くと、なんと、田沢温泉行の村営バスがもう終わってしまったよう。ちょっとショック。けれども、そこから温泉まで、実はさほどの距離もないらしい。ならば歩いていくか、ということで、歩いて温泉地まで行くことにした。

できるだけ里道を通る。里湯、なんてのもある。ほんとに、地元の人しか使ってない湯のようだ。ここの前は市という地名がついている。湯のあったところに市。なかなか興味深い。

農作業をしている人の脇を通り、坂道を登っていくと、神社が見えた。バス停には里宮と書いてある。延喜式式内社である子檀嶺(こまゆみ)神社の里宮であるようだ。神楽殿から見る山村の風景が、なんとも美しい。


(続く)