たくさんの人々。

ただでさえ風邪気味のところに仕事明けで疲れていたせいもあって、人の多いところはうんざりだった。なんだか狭苦しい空間でありきたりな音楽が無神経に流されている。こんなののどこがいいんだろうと思っていたら、後ろにいたカップルの女の子が「なんか楽しい感じがするよねえ、音楽もかかってるし。」と言った。正直、驚いた。後ろにいる二人の間に流れているのは、付き合い始めたばかりのような、なんとなく浮ついた雰囲気。きっと、どんなことでも楽しく思えるんだろうな。

僕はそう思っていたんだけれども、あとでよくよく考えてみると、もしかすると、彼女は本気でそう思っていたのかもしれない。うんざりするほどの人混みの中で、TVなどの宣伝で取り上げられたショップで、あらかじめ規格化された手作り風のジャンクな食べ物を食べることが、彼女にとっては楽しみなのかもしれない。「ああ、こんなの代理店が大衆向けに企画したのがバレバレだよなあ」なんてこと、知ってて来てる人ばかりだと僕は思っていた。けれども、そんなこと考えもしないか、あるいは知ってても本気でそれが楽しいと思っている人が、実は僕が想像する以上に多いのかもしれない。

こないだ巨大ショッピングモールに行ったのも、そういう意味では、ちょっと考えさせられる貴重な経験だった。