脱線事故と民営化。

脱線事故の起きた羽越本線の運転が再開されたとのこと。とりあえず風力計設置などの対策が施された上でのことだというので、地域住民の足が動き始めることは喜ばしい。安全には十分に注意を払って運行してもらいたいものだ。

ところで、今回の事故は突風が原因との見方が有力だ。事故現場の映像を見ると、川沿いの平野の築堤上を線路が走っており、確かに突風には弱そうな線形だ。最終的には防風柵を設置するらしい。

ただ、こういう場所って、もし国有鉄道であったならば周囲の土地も確保して鉄道防風林などの対策を行っていたような場所なのではないのだろうか。柵よりは、防風林の方がトータルで風を弱める効果は大きいだろう。防風柵で果たして大丈夫なのかという念は残る。

民営化されたとしても、鉄道における最も重要なことが安全性であることに変わりはないが、たとえばこういう事故の対策として、やはり公共鉄道であった時代と民営鉄道となった時代とでは、対策のあり方が異なってくることは容易に予想できる。会社という組織の目的はあくまで利益の追求にあるわけだから、土地も費用も手間も、そして時間もかかる防風林のような対策は、民営化された鉄道会社には取りようもないだろう。

目先の利益については、民営化は確かに効果を発揮する。けれども安全の追求において、会社組織はあくまで対利益との関係によって対策を行っていくわけであり、防風林のように利益を度外視したような対策は取りようがない。

運行にコストがかかるというのは確かに問題ではあるけれど、鉄道のような公共性の非常に高い事業においては、決してコストだけが問題ではないはずで、コストを払ってでも維持すべきサービスというのは存在すると思う。そういったコストのかかる公共性を「赤字」という形で悪者にして切ってしまうことの問題が、あの事故には象徴的に現れたんじゃないかという気がしている。