「そして日本は焦土となった」

NHKスペシャル

ナチスドイツによるゲルニカ空爆、旧日本軍による重慶空爆に始まる都市空爆。しかし史上最悪の空爆は、アメリカ軍が大戦末期に行った日本空爆であると言われる。東京大空襲をはじめとする都市空爆が、どのようにして決定され、実行されたのかを追ったドキュメンタリー。

軍事目標だけを爆撃する精密爆撃と、無差別に都市を爆撃する絨毯爆撃。どちらの戦術によって日本を攻撃するかについて、アメリカ空軍内部でも意見が分かれていた。精密爆撃は基本的には一般市民を巻き添えにしないが、爆撃の成功率が低い。一方絨毯爆撃は、市民を巻き添えにするが効果的な爆撃だと考えられ、現実の爆撃でも成功していた。しかし絨毯爆撃は一般市民への無差別爆撃であり、そのような戦闘行為を行うべきではないとの意見も根強かった。

だが、B29の大量生産と新型焼夷弾の開発により、日本爆撃への圧力が強まる中、精密爆撃作戦の失敗と絨毯爆撃作戦の成功により、カーチス・ルメイが主導する絨毯爆撃作戦が採用され、6大都市への爆撃を実行。大都市は軒並み焦土と化し、すでに爆撃すべき目標を失っていたが、米軍の戦略爆撃体制は巨大な組織となってしまっており、いまさら作戦を中止するわけにもいかず、さらに180もの都市を目標とする空爆作戦を実行に移した。

そしてこの戦術は、ベトナム戦争を始めその後の戦争に大きな影響を与えることとなった。

米空軍内部で、すんなりと絨毯爆撃作戦が採用されたわけではなかったことを、この番組で初めて知った。あと、日本側から見ると、まるで天災であるかのように思える都市への空襲も、米軍にとっては緻密な作戦によって裏付けられた計画的な攻撃なのだなあと、改めて感じさせられた。

番組内容への批評としては、ルメイを敵役と位置づけすぎなのではないか、という気がした。空軍内部で絨毯爆撃に反対する立場の将校の子孫からインタビューが取れたことが大きかったんだろうけれど、その人たちの立場にしてみれば、自分たちに責任はなくて、作戦を主導したルメイが悪者だってことになる。ま、実際そうなのかもしれないけれど、でもそういう作戦って、ペンタゴンだけで決めてたのかなあ。ルーズベルトの意向とかは、どうだったんだろ?ちょっと触れてはいたけど、あんまりよくわからなかった。

ただ、「貴官の責任において作戦を立案せよ」って内容の指令が出てたことを鑑みると、ルメイの戦争責任は免れないだろうな。

原爆の問題も、技術的な側面はともかく、アメリカ軍内部における作戦計画の問題として考えた時には、空爆と同じ根をもつ問題だと思うので、今回の番組はそのことを考える上でも興味深いものだった。