「東京原発」

東京原発 [DVD]

ツタヤでDVDが安かったので借りてきたうちのひとつ。

役所広司扮する東京都知事が「東京に原発を誘致する」とブチ上げる。一方、日本に向けてフランスから運ばれてきたプルトニウム燃料は、原発反対派の待ち受ける港を避け、東京はお台場から、都心を通って運ばれる。果たして知事の真意は、そしてプルトニウム燃料は……といった導入部。

案外おもしろくできていて、一気に見てしまった。そんなにテンポも悪くなく、また役者の設定がしっかりしていて、見ていてストーリーが理解しやすい。原発の専門知識が多く出てくるから、こういうところではシンプルな設定が必要だろう。

僕はこの映画、ぜんぜん知らなかったけれど、原発問題に関する多くの情報や論点を、劇中できちんと“おもしろく”示せていた点は、高く評価すべきだろうと思った。こういう情報提示のシーンって、えてしてつまらない部分になりがちだが、その説明がストーリーの進行にきちんと組み込まれているので、観客も飽きずに見ることができるのだろう。

なんでこの映画、そんなに取り上げられてないんだろ?やっぱり、思いっきり原発批判だからかなあ?




ネタバレ注意




原子力安全委員の益岡徹のうさんくささが、僕はなんともいい感じ。また、榎本教授、ずっといい人キャラかと思いきや、最後のシーンでは都庁のガラス戸の内側でじっと見守っていたのには笑えた。ただ、吉田日出子扮する環境局長の資源無駄遣いぶりは、これが何かの伏線になっているわけでもなく、ちょっと中途半端だったような気がする。

なんというか、きわめて舞台的な映画だな、と感じた。場面設定は、基本的に都庁第一本庁舎の会議室のシーンと、塩見三省扮するトラック運転手の輸送シーンだけ。これなら、おそらく舞台で上演可能だろうと思う。ただ、会議室のシーンがそれなりにまとまっていた分、トラックのシーンがやや付け足し的になっていることは否めない。塩見三省そのものの演技はよかったんだけど、どうしてもドタバタ劇っぽい印象を残すことになったのは残念だな。

ところでラストのシーン、都知事の記者会見の内容が、プルトニウム燃料の爆発を食い止めたことではなく、原発の東京誘致だったことが、どうもいまいち理解できなかった。その後に、日の丸が倒れかかった燃料容器に雨が当たり、臨界を起こしてしまってチェレンコフ光が見えるってイマージュで映画そのものも終わるってところは、なかなか皮肉が効いててよかったんだけど。